SF作家アイザック・アシモフの短編集「I,Robot」を原案に、映画『キング・オブ・エジプト』(2016年9月9日公開)などで知られる、アレックス・プロヤス監督の手で2004年に映画化された作品。

 

2035年の近未来のシカゴを舞台に、ロボット嫌いでテクノロジー恐怖症の刑事が、ロボットが容疑者となった殺人事件を追う、アクションミステリー作品。

 

あらすじ

2035年のシカゴ。ヒト型のロボットが人間の生活に密着した時代。ロボットは、ロボット3原則に則って機能していた。

ロボット3原則とは、”1.ロボットは人間を傷つけてはならない。また 人間への危険を見過ごしてはならない”、”2.原則1に反しない限り、ロボットは人間の命令に従わねばならない”、”3.原則1と2に反しない限り、ロボットは自己を守らねばならない”というもの。

つまり、ロボットは、人間に危害を加えることも、人間に反抗することもなく、人間の世話をしてくれる、人間にとって従順な存在だった。

ある日、スプナー刑事(ウィル・スミス)は、街中を鞄を手にもって疾走するロボットに出くわす。即座にひったくり犯だと判断したスプナー刑事は、ロボットを追いかけて取り押さえる。しかし、それは冤罪だった。ひったくり犯に見えたロボットの行為は、ロボットが所有者の女性に急いで吸入器が入ったカバンを届けたに過ぎず、一切、犯罪性の無い行為だった。

一般的に、ロボット3原則に縛られたロボットが犯罪を犯すわけがないと考えられて、大多数の人がそのように信じて生活している。ロボットが犯罪を犯すなどありえないことである。それゆえ、スプナー刑事のロボットに対する嫌疑、そして過剰反応ともいえる逮捕行為は、ジョン・バージン副所長(チー・マクブライド)など警察の同僚らかも問題視された。

そんな時、ロボットメーカー、USロボティクス社でラニング博士の死体が発見される。現場の状況から自殺とみられたが、ラニング博士によって現場に呼び寄せられたスプナー刑事は捜査を開始する。

レビュー

ロボットが事件を起こしたら、誰が責任を負うべきなのか?
殺人の容疑がかかったロボットが警察に逮捕された際、U.S.ロボティクス社の会長、ローレンス・ロバートソン(ブルース・グリーンウッド)は、殺人罪とは人に適用されるものであり、ロボットには適用されないと言い、殺人容疑がかかったロボットを引き取っていく。

日本の法律で考えれば、ロボットを殺人の道具として使ったと考えるなら、ロボットに殺人の命令をした者が殺人罪に問われる可能性もあるし、プログラムのバグなどによって殺人の結果が発生したのであれば、製造物責任法(PL法)などに基づいてメーカー自体の責任が問われることも考えられるだろう。

しかし、本作で描かれているような、ロボットが人から完全に独立したAIで運用される世界が実現した場合、現行法では対応できない問題が発生する。ロボットに殺人の故意があると言う他ないとも言えるからだ。

現在、レベル4の自動運転車など、完全な自動運転車が事故を起こし、ロボットの判断で人間が死亡する結果が発生した場合、運転者か、メーカーか、国か、それともロボットか、一体、誰が責任を負うのかが問題となっている。本作は、今、近い将来に登場しようとしている現実の未来を先取りした作品となっているのである。

公式サイトなど

映画『アイ, ロボット』公式サイト
http://movies.foxjapan.com/irobot/

 

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