江戸時代の離婚劇場、大泉洋主演、映画「駆込み女と駆出し男」あらすじ&レビュー
井上ひさし『東慶寺花だより』 (文春文庫) を原案に、映画『わが母の記』などで知られる原田眞人監督が実写映画化(2015年5月16日公開)。
江戸時代後期、様々な事情から夫や愛人と離縁するため縁切り寺に駆け込む女たちと、縁切り寺の御用宿に居候する男との人間ドラマが描かれた。
あらすじ
江戸時代後期、1841年(天保12年)。
夫や愛人との離縁を望む女性たちは、夫や旦那から離縁状をもらう必要があった。
しかし、女性が離縁を望んだからといって、男性が簡単に応じるとは限らない。
夫や旦那から同意を得られない女性たちが離縁を求めて駆け込む尼寺が鎌倉にあった。
それが東慶寺だ。
女性は東慶寺に駈け込んでから2年が経過すると、夫らに離縁を強制し、離縁を成立させることができた。
東慶寺は、現代でいう所の、DVやハラスメントなどから女性を守る、シェルターや裁判所や弁護士のような役割を果たす場所だった。
東慶寺の傍に、御用宿、柏屋があった。
御用宿とは、東慶寺に駆け込んだ女たちから聞き取り調査をする場所だ。
江戸を離れ、そんな分けありの女たちが過ごす宿に居候することになるのが、中村信次郎(大泉洋)だ。
信次郎は、御用宿、柏屋の主人、源兵衛(樹木希林)の甥で、駆け出しの医師で戯作者志望だった。
戯作者志望の信次郎にとってみれば訳ありの女性が人生の転機に訪れる御用宿はネタの宝庫でもあった。
ある日、夫の暴力等に苦しんでいた、じょご(戸田恵梨香)と、妾だったお吟(満島ひかり)が、東慶寺への駆け込みを成立させる。
そして、御用宿の柏屋で2人の聞き取りが始まる。
レビュー
現代の我が国では、離婚について、協議離婚(民法763条)や調停、審判など裁判所を利用した離婚方法など、種々の離婚制度が法定されている。また、現行法下における結婚とは、男性、女性、双方の意思に基づいて成立するものであることから(憲法24条)、当然、女性から男性に離婚を求めることもできる。それが現代に生きる我々の普通の感覚だろう。
本作で描かれている江戸時代では、女性から男性に離縁を求めるには、東慶寺のような権威のある場所で2年間過ごさなければならなかった。このような駆け込み寺の制度は、女性の社会的地位がないがしろにされてきた時代の産物だと言う他ない。
とはいえ、現代的な感覚では不十分であるとしても、1841年(天保12)の江戸時代後期の時代性に鑑みれば、駆け込み寺のような制度で女性への救済策を用意していたのは、世界的に見て進歩的な考え方をしていたとも言え、江戸時代の人の女性の人権に対する意識の高さを評価すべきだろう。
本作は、江戸時代の女性の権利などの在り様について考えさせられる映画である。
公式リンクなど
映画『駆込み女と駆出し男』公式サイト
http://kakekomi-movie.jp/