リアルへと繋がるMMOの絆、小説「ファイナルファンタジーXIV きみの傷とぼくらの絆」 レビュー
小説家藤原祐、イラストレーターいとう のいぢの小説「ファイナルファンタジーXIV きみの傷とぼくらの絆 ~ON(THE NOVEL)LINE~」 (電撃文庫刊)は、冒険者1000万超の人気オンラインゲームを小説化した作品。「ファイナルファンタジーXIV」をプレイする友人や家族らとのリアルな心の交流を描いた。
「ファイナルファンタジーXIV」は、人気ゲーム「ファイナルファンタジー」シリーズ(スクウェア・エニックス)の14作目のナンバリングタイトル。オンラインゲーム「ファイナルファンタジーXIV」は、CGで作られた世界の中で、同時に多数の人が一緒に遊ぶことができる、MMORPGといわれるジャンルのゲームである為、ゲーム内で出会うキャラクターの大半は、世界中の何処かに住んでいる誰かがプレイしているキャラクターになる。
小説は、自身も「ファイナルファンタジーXIV」のプレイヤーの一人であると公言する藤原祐が、「ファイナルファンタジーXIV」を通じて結びついていく友人や家族らとの絆を描いた。藤原祐は、「煉獄姫」シリーズなどの作者としても知られているが、本作ではダークな要素は抑えられている。イラストは、「灼眼のシャナ」シリーズのイラストなどで知られている、いとうのいぢ。いとうも、「ファイナルファンタジーXIV」のプレイヤーだ。また、イラストは監修を「ファイナルファンタジーXIV」の開発・運営を行っているしているスクウェア・エニックスが担当しており、ゲーム内の世界観がリアルに再現されている。
あらすじ
梶木壱樹(大学1年生)は、従姉妹の不知火古都(大学2年生)にとあるゲームをやりなさいと命令された。それが、「ファイナルファンタジーXIV」だった。恐い従姉、古都の命令に逆らうことのできない壱樹は、古都の言がままゲームを開始する。
「ファイナルファンタジーXIV」では、ゲーム序盤は、プレイ開始後、最初に降り立つ都市の周辺で、クエストをこなすことで、プレイしながらゲームに慣れていけるようにデザインされている。
壱樹(キャラクターネーム:イツキ・ラダー)は、森の中にある都市(グリダニア)に降り立ったが、好奇心旺盛な壱樹は、ゲーム開始から数日後には、森のマップ(黒衣森)を西へ、北へと抜け、黒衣森を抜けだした。
壱樹が辿り着いた場所は、クルザスと呼ばれる雪で覆われた白銀の世界だった。クルザスは高レベル帯のモンスターが生息する場所だ。本来、壱樹のような始めて数日の駆け出しの冒険者が来る場所ではないが、壱樹は、好奇心の赴くままクルザスの拠点(エーテライト)、ドラゴンヘッドを目指した。
しかし、壱樹の無謀な冒険は、エーテライトまで後もう少しの所で強力なモンスターに行く手を絡まれ、戦闘不能に陥ることで終了する。
戦闘不能になれば、ホームとして登録されているエーテライトに戻る(デジョン)しかない……。そう思ったとき、1人の少女が壱樹に声をかけた。「ドラゴンヘッド、行こうとしてた?」、それが嶋原朝霞(キャラクターネーム:ア・サカ・シマ)との最初の出会いだった。
「ファイナルファンタジーXIV」で様々なキャラクターを演じてストレスを発散しよう!
壱樹と朝霞には共通の知人がいたことから、ゲーム外でも再会することになる。しかし、実際の朝霞は、ゲーム内で見せていた明るく元気な彼女とは異なり、療養所のベットの上で生活する暗い女の子だった。
「ファイナルファンタジーXIV」では、実際の自分とは全く別のキャラクターを作成し演じることができる。例えば、年配の人が若いキャラクターでプレイする、男性が女性のキャラクターをプレイするなど、年齢や性別、性格に至るまで、本来の自分とは全くの別人になりきることができるのである。
また、病気療養中であったとしても、ゲームがプレイできる状態にあれば、ゲーム内で友達と一緒に遊んだりすることもできる。そして、その体験は、入院で塞ぎがちな気持ちから患者の心を救う。オンラインゲーム「ファイナルファンタジーXIV」は入院患者のストレスの発散などメンタルケアに活用できるのである。
「ファイナルファンタジーXIV」で友人や家族との絆を作ろう!!
ベッドの上の朝霞を見た壱樹は、ゲーム内で朝霞が壱樹を助けてくれたように、今度は壱樹が朝霞を支えようと決心する。
「ファイナルファンタジーXIV」では、多人数で協力しながらゲームを進めるコンテンツも多い。1つのことを複数の人で共同で作業するという、共通体験の積み重ねは、一緒にプレイしたメンバーの絆を醸成する。つまり、「ファイナルファンタジーXIV」は、友達や家族と絆を作るツールとしても機能するのである。
本作は、”見知らぬ男女がオンラインゲームで知り合う物語”というだけなく、ロールプレイによるメンタルケア、共通体験による友達や家族との絆の構築など、「ファイナルファンタジーXIV」にゲーム以上の可能性を考えさせる作品だ。
公式サイトなど
小説「ファイナルファンタジーXIV きみの傷とぼくらの絆 ~ON(THE NOVEL)LINE~ 」公式サイト
http://dengekibunko.jp/newreleases/978-4-04-869448-3/
オンラインゲーム「ファイナルファンタジーXIV」公式サイト
http://jp.finalfantasyxiv.com/